その温もりに用がある

生命は奇跡の結晶体だ。人間、動物、植物、地球に存在する物は全て「生まれる」という奇跡を繰り返して、起源から現代まで存在してきた。地球の誕生、果ては宇宙の誕生さえ奇跡かも知れない。普段当たり前のように生活しているけど、ずっと繰り返してきたその奇跡のどの一部分が掛けても今の「当たり前」は存在していなかっただろう。そして形ある生命は、必ず死を迎える。遅かれ早かれ、いずれ。だから生命の輝きは尊く、儚い。だから一生懸命に生きている。

 

フランスで大規模なテロが起こってしまった。最悪の自爆テロ。多くの人達が犠牲となってしまった。テロに襲われた場所にはコンサート会場もあった。生身の人間目掛けて無差別に銃弾が放たれた。とても悲し過ぎる。

メディアは大々的にこの事件を取り上げたが、その裏ではレバノンでもテロが発生、イラクやシリアでは日常のように銃撃戦や爆撃が続き難民も増えていく一方だ。韓国では大きな暴動があったり、世界は憎しみと悲しみの連続に包まれている。そしてフランスのテロに対し、報復としてフランス国家が行ったのはテロリストへの空爆だった。巻き込まれてしまった一般市民もいる。人殺しを壊滅する為の人殺し。戦争だ。いつまでこの負のループを繰り返すのか。いつまで尊い奇跡を破壊する行為をお互い続けるのか。「眼には眼を、歯には歯を」の思想を棄て去らない限り、何もいい方向には変わっちゃくれない。未来を背負う、夢を持った子供達に何を残そうとしているのだろうか。武力を使った争いは何の解決策も生まない。絶望は希望には回帰しない。

 

相手を殴れば、当然相手も自分の手も痛めてしまう。しかし、相手の話を聞いたり手を繋いだりする事は、相手の気持ちを知り、温かさを知り、そして自分の温もりも伝える事が出来る。シンプルだけどそういう事。己の利益だけ求めれば、周りを支配という形で制圧するだけで最終的には自己完結で終わってしまう。他の人達には何も伝わっちゃいない。上の世代、同世代、下の世代の意見や要望を受け入れながら、それぞれが納得したり、譲り合える部分を共有し合いながら行動をしていかなければ、どの人間どの世代に取っても、良い世界は生まれていく筈はない。国籍、宗教、文化は違えども、自分達が生きる世界である。悲しい顔じゃなく、少しでも誰かの笑顔が溢れる世界になるように、正しい行動を。

 

観念を捨てて己を誇示せよ

雑踏、罵倒、世の流れ越えて

変わらない日々を変わるように生きろ

そう、その帳を破り捨てて

 

=渡部AL弘道=